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AI活用

知識の時代と人工知能

「人工知能」という言葉が世に出たのは、今からおよそ70年前、1956年にアメリカで行われたダートマス会議がきっかけです。この会議は、様々な分野の科学者が集まり、人間の知的な働きを機械で再現できるかという大きな目標を掲げ、話し合った歴史的な会議です。まさに、この会議で「人工知能」という新しい研究分野が誕生しました。会議の参加者たちは、人間の思考過程を機械で実現するために、コンピュータに推論や探索といった能力を持たせることを目指しました。推論とは、与えられた情報から新しい結論を導き出すことであり、探索とは、膨大な選択肢の中から最適な答えを見つけ出すことです。これらの能力は、人間が複雑な問題を解決するために不可欠な要素です。しかし、当時のコンピュータは性能が限られており、複雑な計算を処理するには能力が不足していました。そのため、人工知能の研究は思うように進まず、大きな壁にぶつかりました。例えば、言葉を理解させたり、画像を認識させたりといった高度な処理は、当時の技術では実現が困難でした。技術的な課題は山積みでしたが、人工知能という新しい概念は多くの研究者を惹きつけ、様々な分野で研究開発が盛んに行われるようになりました。そして、長い年月をかけて、少しずつ技術的な壁を乗り越えていくことになります。人工知能の歴史は、まさに、ダートマス会議から始まった挑戦の歴史と言えるでしょう。
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常識を蓄積する人工知能:Cycプロジェクト

人間の知能を機械で再現するという夢は、長い間、研究者たちを魅了してきました。そして、1984年、この難題に真正面から取り組む壮大な計画、Cycプロジェクトが産声を上げました。当時の人工知能研究は、特定の分野に絞った知識を基に、限られた範囲で推論を行うシステム開発が中心でした。医療診断やチェスのような、ルールが明確な領域で成果を上げていましたが、人間の思考の根幹を支える、膨大な量の一般常識を取り扱うことは困難でした。例えば、私たちは「鳥は空を飛ぶ」というごく当たり前の知識を無意識に用いて、世界を理解しています。ペンギンは鳥なのに空を飛べないといった例外も理解しています。このような常識は、人間が複雑な状況を判断したり、新しい知識を学ぶ上で欠かせないものです。Cycプロジェクトは、まさにこの人間の持つあらゆる常識を、コンピュータが理解できる形でデータベース化し、それを基に推論できる人工知能の開発を目指しました。まるで人間の脳の中に広がる知識の網を、コンピュータの中に再現しようという試みです。この試みは、当時としては非常に大胆なものでした。プロジェクトを立ち上げたダグラス・レナートは、人間の持つ常識を全てコンピュータに入力するには、350人年、つまり350人が1年間かけて作業するのと同等の途方もない時間が必要だと見積もりました。これは、プロジェクトの途方もない規模と、人間の持つ常識の膨大さを物語っています。Cycプロジェクトは、人工知能研究における大きな挑戦であり、人間の知能の解明に向けて、新たな一歩を踏み出したのです。