知識を生み出すSECIモデル

知識を生み出すSECIモデル

デジタル化を知りたい

先生、『SECIモデル』ってよく聞くんですけど、具体的にどんなものなんですか?

デジタル化研究家

SECIモデルは、人がどのように知識を創造し、共有していくのかを説明する考え方だよ。 頭の中にある漠然とした知識を『暗黙知』、言葉や図などで表現された知識を『形式知』と言うんだけど、SECIモデルでは、この2種類の知識が循環することで新しい知識が生まれていくと説明しているんだ。

デジタル化を知りたい

循環…ですか?具体的にはどんな風に?

デジタル化研究家

例えば、職人さんの技を例に考えてみよう。弟子は師匠の技を、見て真似て覚えるよね?これが『共同化』。次に、師匠がその技のコツを言葉で説明するのが『表出化』。コツをまとめたマニュアルを作るのが『連結化』。最後に、弟子がマニュアルを読んで自分のものにするのが『内面化』だよ。このように、暗黙知と形式知が相互に変換しながら、知識が深まり、共有されていくんだ。

SECIとは。

『SECI(セキ)』とは、知識を生み出す活動に焦点を当てた知識の管理方法の枠組みのことです。人が心の中で理解している言葉にできない知識は、共有化、言葉や図表などによる表現、知識と知識の組み合わせ、そして個人の中で理解されるという4つの変化の段階を経て、グループや組織で共有できる知識になると考えられています。

知識の種類

知識の種類

人は様々なことを知っていますが、これらの「知っている」には大きく分けて二つの種類があります。一つは言葉で表すのが難しい、感覚的な知識です。これは暗黙知と呼ばれ、例えば自転車に乗る時の体のバランス感覚や、熟練した職人さんの研ぎ澄まされた技などがこれに当たります。このような知識は、実際に経験を積み重ねることで初めて身につくもので、言葉で説明しようとしてもなかなかうまく伝えられません。そのため、他の人と共有することも容易ではありません。

もう一つは、言葉や図表などで表現できる知識です。こちらは形式知と呼ばれ、例えば製品の使い方を説明した説明書や、会社の業績をまとめた報告書、建築物の設計図などが例として挙げられます。形式知は目に見える形ではっきりと表現されているため、理解しやすく、他の人にも伝えやすいという特徴があります。会議の資料や教科書の内容なども、この形式知に含まれます。

このように、暗黙知と形式知はそれぞれ異なる性質を持っていますが、互いに全く関係がないわけではありません。例えば、熟練の職人が自分の技術を弟子に伝える際には、言葉で説明できる部分は形式知として伝え、言葉では伝えられない部分は実際に作業を見せることで暗黙知として伝えます。また、最初は暗黙知として体得していた技術も、繰り返し実践し分析していくうちに、形式知として整理できるようになることもあります。このように、暗黙知と形式知は互いに影響し合い、変化し続けることで、私たちの知識はより豊かで深いものになっていきます。

知識の種類 説明 特徴
暗黙知 言葉で表すのが難しい、感覚的な知識 自転車のバランス感覚、職人の技 経験によって習得、共有が難しい
形式知 言葉や図表などで表現できる知識 説明書、報告書、設計図、会議資料、教科書 理解しやすい、伝達しやすい

SECIモデルとは

SECIモデルとは

{『SECIモデル』とは、人がそれぞれ心に抱いている言葉にならない知識や感覚といった目に見えない知識が、手順書や報告書といった目に見える形のある知識へと変化していく流れを説明する考え方}です。具体的には、『共同化』『表出化』『連結化』『内面化』という四つの段階を繰り返すことで、個人の知識が組織全体の共有財産へと育っていくと考えられています。

まず『共同化』とは、共に仕事をする中で、周りの人のやり方を見て学ぶ段階です。先輩社員の仕事ぶりを間近で見て、その技を盗むといった、見て覚える段階です。暗黙知と呼ばれる、言葉にならない知識がやり取りされます。

次に『表出化』は、言葉にならない知識を、言葉や図表を用いて表現する段階です。例えば、熟練の職人が長年の勘に基づいて行っていた作業を、マニュアルとして書き起こすようなイメージです。この段階を通して、暗黙知が形式知へと変換されます。

三番目の『連結化』は、複数の形式知を組み合わせ、新たな知識を生み出す段階です。個別に作成されたマニュアルを統合して、より体系的な手順書を作成したり、複数の報告書を分析して、新たな戦略を立案したりするといった活動が該当します。

最後の『内面化』は、組織で共有されている形式知を、個人が実践を通して自分のものとして吸収する段階です。新しく作成された手順書に従って作業を行うことで、その内容を理解し、自分の知識として身につけていくイメージです。形式知が再び暗黙知へと変換され、個人の能力向上に繋がります。

この四つの段階を繰り返すことで、知識は個人から組織へと広がり、組織全体の知恵として蓄積されていきます。この循環は、組織が常に学び続け、新しいものを生み出し続ける上で、非常に大切な役割を担っています。

共同化

共同化

共同化とは、言葉に表すことが難しい、経験に基づいた知識や技能を共有する段階のことです。個人の中に蓄積された、感覚的な知識や技術は、他の成員と共有することで、組織全体の能力向上に繋がります。 共同作業や、先輩から後輩へ仕事を通して指導する中で、こうした知識や技能は受け継がれていきます。

例えば、長年培ってきた勘やコツといったものは、文章化することが困難です。熟練した技術を持つ職人が、弟子に技術を伝える場面を想像してみてください。言葉で説明するだけでは、細かいニュアンスや微妙な力加減といったものは伝えることができません。弟子は、師匠の作業を注意深く観察し、実際に手を動かすことで、師匠の技術を体得していきます。このように、経験を共有し、共に作業を行う中で、言葉にできない知識や技能が伝達されるのです。

また、同じ部署内で、特定の業務に精通した人がいるとします。その人が持つ業務の進め方や、問題解決のノウハウは、文書化されていない暗黙の知識です。しかし、周りの人が一緒に仕事をする中で、その人のやり方を見て学び、自然と共有されていきます。このように、共同化とは、形式知化されていない知識や技能を、共同作業や指導といった、人と人との直接的な関わりを通して共有していくことを指します。

この段階では、共有される知識はまだ整理されておらず、明確に表現できる状態ではありません。しかし、共通の経験を通して、関係者間で共通の理解が形成される重要な段階です。これは、組織全体の能力を高め、より良い仕事へと繋がる第一歩となります。

段階 内容 方法 効果
共同化 言葉に表すことが難しい、経験に基づいた知識や技能を共有する。勘やコツ、業務の進め方や問題解決のノウハウなど。 共同作業、先輩から後輩への指導、師匠から弟子への伝承、人と人との直接的な関わり。
  • 関係者間で共通の理解を形成する
  • 組織全体の能力を高める
  • より良い仕事へと繋がる第一歩となる

表出化

表出化

表出化とは、頭の中にある漠然とした知識や感覚を、誰にでも分かる形にすることです。共同作業を通して皆が共通に持つようになった知識を、話し言葉や図、文章といった手段を使って表現することで、他の人にも理解しやすく伝わりやすい形に変えます。

例えば、熟練した職人さんが長年培ってきた技術を、新しく入ってきた人でも分かるように手順書にまとめたり、作業の手順を絵で説明した図を作成する作業は、まさに表出化と言えます。他にも、チームで話し合いながら、抱えている課題を整理して報告書にまとめることも表出化にあたります。

表出化は、言葉で表現しにくい感覚やコツを具体的な形に変える重要な作業です。例えば、美味しい料理を作るベテラン料理人は、長年の経験から「少々」「ひとつまみ」といった感覚的な表現で味付けをしますが、他の人が同じように作るのは至難の業です。そこで、調味料の分量をグラム単位で正確に書き出すことで、誰でも同じ味を再現できるようにします。これが表出化の一例です。

表出化によって知識は目に見える形となり、組織全体で共有できる財産へと変わります。共有された知識は、組織の生産性を高め、新しい技術や製品の開発、サービスの向上に役立ちます。また、人材育成にも大きく貢献します。ベテラン社員のノウハウを形式知化することで、若手社員は効率的に学ぶことができ、組織全体の能力向上につながるのです。このように、表出化は組織にとって大変重要なプロセスと言えるでしょう。

表出化とは 頭の中にある漠然とした知識や感覚を、誰にでも分かる形にすること
方法 話し言葉、図、文章など
  • 熟練工の技術を手順書や図にまとめる
  • チームで話し合った内容を報告書にまとめる
  • 料理の味付けをグラム単位で書き出す
メリット
  • 知識の共有、組織の財産化
  • 生産性向上、技術・製品開発、サービス向上
  • 人材育成

連結化

連結化

結びつけることは、既に整理された知識を組み合わせ、新たな整理された知識を生み出す段階です。これは、まるでパズルのピースのように、既存の文章や数値情報、まとめの文章などを組み合わせ、細かく調べたり、書き直したりすることで、新しい知識や気付きを得る工程と言えます。会社の中に散らばる様々な種類の情報、例えば、色々な部署が作成した報告書を一つにまとめて分析することで、顧客が求める新しい商品やサービスが見えてきたり、これまで関係がないと思われていた技術を組み合わせることで、全く新しい製品が生まれたりするといったことが、結びつけることの一例です。

例えば、ある会社の営業部署は、顧客から「もっと使いやすい製品が欲しい」という意見を多く聞いているとします。一方、技術部署は、新しい素材の開発に成功し、それを製品に活用する方法を模索しているとします。これらの情報を結びつけることで、「顧客が使いやすい新しい素材を用いた製品」を開発するというアイデアが生まれます。これは、個別の情報だけでは得られなかった新たな知識です。

結びつけることは、単に情報を集めるだけでなく、そこに含まれる意味や関係性を理解し、新たな視点を加えることで、より価値の高い知識へと転換させる作業です。既存の知識を整理し直すことで、より深く、より広い知識が作られます。ばらばらに存在していた知識の断片が、結びつけることを通じて一つの大きな絵を描くように、全体像を明らかにし、新たな価値を創造するのです。このように、結びつけることは、組織全体の知恵を最大限に引き出し、未来への展望を切り開くための重要なステップとなります。

連結化

内面化

内面化

内面化とは、明文化された知識を、再び個人が意識せずに持っている知識や技能として吸収していく段階のことです。知識を共有し、結び付けることで生まれた新たな知識を、学びや実践を通して、個人の経験や知識として吸収していきます。

例えば、新しく作られた作業の手順書や、研修で用いる資料を学ぶこと、あるいは新しい仕事のやり方を実際に試してみることを通して、明文化された知識が、一人ひとりの意識せずに持っている知識や技能へと変わっていきます。

内面化は、組織全体で共有された知識を個人の能力向上に繋げる重要な役割を担います。手順書や研修資料といった形で共有されていた知識が、内面化によって個人の血肉となることで、その人自身の能力が向上するのです。そして、個々の能力の向上が、組織全体の力の向上に繋がっていくことは言うまでもありません。

個人が知識を吸収し、自分のものにする過程で、新たな気付きや工夫が生まれることもあります。これは、意識せずに持っている知識や技能に変化が生まれたことを意味し、組織の知識創造のサイクルを再び回し始めるきっかけとなります。このようにして、共有化、表出化、連結化、内面化を繰り返すことで、組織は絶えず知識を生み出し、成長し続けることができるのです。

内面化