マイクロサービスで変わるシステムの姿
デジタル化を知りたい
先生、『マイクロサービス』って最近よく聞くんですけど、どういうものなんですか?
デジタル化研究家
簡単に言うと、大きなひとつのシステムを、小さな部品のように分割して作る方法だよ。例えば、通販サイトを例に取ると、商品表示、買い物かご、決済といった機能をそれぞれ独立した小さなサービスとして作るんだ。
デジタル化を知りたい
なるほど。でも、全部まとめて作った方が楽じゃないですか? なぜわざわざ分割する必要があるんですか?
デジタル化研究家
いい質問だね。分割することで、一部を変更する時に他の部分に影響を与えにくくなるんだ。例えば、決済方法を変更する場合、決済サービスの部分だけを修正すれば良くなり、他のサービスへの影響を少なくできる。また、それぞれのサービスを別のチームが開発できるので、開発スピードも上がるんだよ。
Microservicesとは。
小さな部品のように、システムを分割して作る方法の一つであるマイクロサービスについて説明します。
マイクロサービスとは
マイクロサービスとは、大きな一枚岩のシステムのように全体をまとめて作るのではなく、小さな部品のように独立したサービスをたくさん組み合わせて、ひとつの大きなシステムを作る設計手法のことです。それぞれの小さなサービスは、まるでレゴブロックのように、特定の機能だけを担当します。たとえば、インターネット上で商品を売買するようなサイトを考えてみましょう。商品を探す機能、注文を受け付ける機能、お金のやり取りをする機能など、様々な機能が必要です。従来の作り方では、これらの機能はすべて一つの大きなプログラムの中に含まれていました。しかし、マイクロサービスでは、商品検索、注文管理、決済処理といった具合に、それぞれの機能を独立した小さなサービスとして開発し、それらを連携させることで全体のシステムを構築します。
このように、機能ごとに分割して開発することには、様々な利点があります。まず、システム全体が複雑になりすぎることを防ぎ、それぞれのサービスをシンプルに保つことができます。これは、システムの開発や保守を容易にするだけでなく、不具合が発生した場合でも影響範囲を限定し、迅速な復旧を可能にします。また、変更や機能追加も容易になります。例えば、決済方法を変更する場合、従来の方法ではシステム全体に影響する大規模な改修が必要でしたが、マイクロサービスであれば決済サービスだけを修正すれば済むため、開発期間の短縮やコスト削減につながります。さらに、それぞれのサービスを別々のチームが開発できるため、開発作業を並行して進めることができ、開発スピードの向上に貢献します。このように、マイクロサービスは、変化の激しい現代社会のニーズに対応するための、柔軟で効率的なシステム開発手法として、多くの企業で注目を集めています。
マイクロサービスの定義 | 大きなシステムを小さな独立したサービスの組み合わせで構築する設計手法 |
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従来の開発との違い | 全ての機能が一つのプログラムに含まれるのではなく、機能ごとに独立したサービスとして開発し連携させる |
マイクロサービスのメリット |
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マイクロサービスの効果 | 開発や保守の容易化、不具合の影響範囲の限定、迅速な復旧、開発期間の短縮、コスト削減、開発スピードの向上 |
その他 | 変化の激しい現代社会のニーズに対応するための、柔軟で効率的なシステム開発手法 |
マイクロサービスの利点
マイクロサービスは、システム全体を小さな独立したサービス群に分割して構築する手法であり、従来の一体型システムとは異なる多くの利点をもたらします。まず、それぞれのサービスが小さく、担当チームが把握しやすい範囲に収まるため、開発スピードの向上が期待できます。大きなシステム全体を理解する必要がなく、担当チームは自身の担当サービスに集中できるため、開発効率が高まり、結果として開発期間の短縮に繋がります。
さらに、個々のサービスが独立しているため、変更や修正の影響範囲が限定されます。一部分の変更がシステム全体に波及するリスクが低減されるため、迅速な機能追加や改修が可能になります。この迅速な対応力は、変化の激しい現代の市場において競争優位性を築く上で非常に重要です。
また、マイクロサービスでは、それぞれのサービスに最適な技術を採用することができます。例えば、あるサービスには最新の言語やフレームワークを、別のサービスには安定性重視の技術を用いるといった柔軟な選択が可能です。これにより、システム全体の技術的負債を軽減し、常に最適な技術基盤を維持することが可能になります。
そして、万が一障害が発生した場合でも、その影響は該当サービスのみに限定されます。他のサービスは通常通り稼働し続けるため、システム全体への影響を最小限に抑えることができます。これは、サービスの可用性を高め、顧客への影響を軽減する上で大きなメリットです。
加えて、マイクロサービスでは、サービスごとに必要な資源量を調整できます。アクセス集中するサービスには資源を重点的に配分し、そうでないサービスには必要最低限の資源を割り当てることで、全体的な資源の利用効率を高め、運用コストの最適化を図ることができます。これにより、無駄な資源の消費を抑え、効率的なシステム運用を実現できます。
メリット | 説明 |
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開発スピードの向上 | サービスが小さく、担当チームが把握しやすい範囲に収まるため、開発効率が高まり、開発期間の短縮に繋がる。 |
変更・修正の影響範囲の限定 | 個々のサービスが独立しているため、一部分の変更がシステム全体に波及するリスクが低減され、迅速な機能追加や改修が可能になる。 |
最適な技術の採用 | サービスごとに最適な技術を採用できるため、システム全体の技術的負債を軽減し、常に最適な技術基盤を維持することが可能になる。 |
障害の影響の限定 | 障害発生時の影響を該当サービスのみに限定し、システム全体への影響を最小限に抑え、サービスの可用性を高める。 |
リソースの効率的な利用 | サービスごとに必要な資源量を調整することで、全体的な資源の利用効率を高め、運用コストの最適化を図る。 |
マイクロサービスの課題
多くの利点を持つマイクロサービスですが、いくつかの課題も抱えています。システム全体を細分化されたサービス群で構成するため、それぞれのサービスが連携して初めて全体の機能が成り立ちます。このため、サービス間の通信管理は複雑化し、全体を把握することが難しくなります。個々のサービスがそれぞれ異なる技術や言語で開発されている場合、通信方法の統一やデータ形式の変換など、考慮すべき点が増え、開発の手間や管理コストが増大する可能性があります。
また、それぞれのサービスを監視し、障害発生時に迅速に対応することも課題となります。サービスの数が増えるほど、監視対象も増え、障害発生時の原因特定や復旧作業も複雑になります。従来の一体型システムであれば、一つのシステムを監視すれば済みましたが、マイクロサービスでは個々のサービスの状態を常に監視し、障害発生時には影響範囲を特定し、迅速に復旧作業を行う必要があります。そのため、高度な監視ツールや自動化された復旧システムの導入が不可欠となります。
さらに、データの一貫性を維持することも重要な課題です。マイクロサービスでは、それぞれのサービスが独自のデータベースを持つことが一般的です。そのため、あるサービスでデータが更新された場合、関連する他のサービスのデータベースも更新する必要があります。このデータの整合性を保つためには、各サービス間のデータ同期を適切に設計・運用する必要があります。不整合が発生すると、システム全体の動作に支障をきたす可能性があるため、細心の注意が必要です。
これらの課題を解決するためには、マイクロサービスに適した技術を選び、開発体制をしっかりと構築することが重要です。例えば、サービス間の通信管理にはメッセージキューやサービスメッシュといった技術が有効です。また、監視や障害対応には自動化ツールや可観測性プラットフォームの活用が不可欠です。さらに、データの一貫性維持には分散トランザクションやイベントソーシングといった手法を検討する必要があります。開発体制においては、各サービスの開発チームが自律的に開発を進められるように、役割分担や責任範囲を明確にすることが重要です。また、継続的な統合・配信(CI/CD)パイプラインを構築し、迅速な開発と安定した運用を実現することも重要です。
課題 | 詳細 | 解決策 |
---|---|---|
サービス間の通信管理の複雑化 | サービス間の連携が複雑になり、全体把握が困難。異なる技術や言語を使用すると、通信方法の統一やデータ形式の変換が必要。 | メッセージキュー、サービスメッシュの活用 |
監視と障害対応の複雑化 | サービス数増加に伴い監視対象が増え、障害発生時の原因特定と復旧作業が複雑化。 | 高度な監視ツール、自動化された復旧システム、可観測性プラットフォームの活用 |
データの一貫性維持の困難さ | 各サービスが独自のDBを持つため、データ更新時に関連サービスのDBとの整合性維持が必要。不整合はシステム全体の動作に支障をきたす。 | 分散トランザクション、イベントソーシングの検討 |
マイクロサービス開発体制の構築 | 各サービスの開発チームが自律的に開発を進められるように、役割分担や責任範囲を明確にする必要がある。 | CI/CDパイプラインの構築、役割分担と責任範囲の明確化 |
一枚岩との比較
これまで広く利用されてきた、全ての機能を一つにまとめたシステム構成は、一枚岩と呼ばれています。この一枚岩構造は、開発の初期段階においては、簡素で理解しやすく、開発速度も速いという利点があります。しかし、システムが大きくなり、機能が増えていくにつれて、全体像の把握が難しくなり、複雑さが増大します。一つの小さな変更がシステム全体に影響を及ぼす可能性があり、修正や機能追加に多大な時間と労力を要するようになります。さらに、一部の修正が他の機能に予期せぬ不具合を引き起こすこともあり、開発チームの負担を増大させる要因となります。
一方、マイクロサービスは、システムを小さなサービスの単位に分割して構築する手法です。それぞれのサービスは独立して動作し、特定の機能に特化しているため、開発や変更、機能追加が容易です。個々のサービスは小規模なため、開発チームは全体を把握しやすく、迅速な対応が可能となります。また、一部のサービスに変更を加えても、他のサービスへの影響は最小限に抑えられます。これにより、柔軟性が高く、変化への対応が容易なシステムを実現できます。
しかし、マイクロサービスにも課題は存在します。個々のサービスが連携して動作するため、システム全体の管理は複雑になります。サービス間の通信やデータの一貫性を保つための設計と運用には、高度な技術と知識が求められます。また、サービスの数が増えるほど、監視や障害対応の負担も増大します。そのため、マイクロサービスを採用する際には、適切な設計、開発、運用体制を構築することが不可欠です。
このように、一枚岩とマイクロサービスはそれぞれに利点と欠点があります。システムの規模や特性、開発チームのスキルなどを考慮し、最適な構成を選択することが重要です。短期的な開発速度を重視する場合や、小規模なシステムでは一枚岩が適している場合もあります。一方、大規模で複雑なシステムや、変化への対応が求められるシステムでは、マイクロサービスが有効な選択肢となります。
項目 | 一枚岩 | マイクロサービス |
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特徴 | 全ての機能を一つにまとめたシステム構成 | システムを小さなサービスの単位に分割して構築 |
メリット | 開発初期段階は簡素で理解しやすく、開発速度が速い | 開発、変更、機能追加が容易。柔軟性が高く、変化への対応が容易 |
デメリット | システムが大きくなると全体像の把握が難しく、複雑さが増大。変更の影響範囲が大きく、修正や機能追加に時間と労力がかかる。 | システム全体の管理が複雑。サービス間の通信やデータの一貫性を保つための高度な技術と知識が必要。監視や障害対応の負担増大。 |
適したケース | 短期的な開発速度を重視する場合、小規模なシステム | 大規模で複雑なシステム、変化への対応が求められるシステム |
導入時の注意点
小さな部品のような仕組みに変えることで、開発の速さや柔軟さを高めることを目指す、小さなサービスの導入をうまく進めるには、いくつか気を付ける点があります。まず、どのような目的で、どのような効果を期待するのかを明確にする必要があります。漠然とした考えのまま進めてしまうと、後で困ったことになるかもしれません。目指す姿をはっきりさせて、それに合ったやり方で小さなサービスに切り分けることが大切です。切り分け方が適切でないと、この仕組の良さを十分に活かせません。
次に、小さなサービス同士がどのようにやり取りするか、情報の整合性をどう保つかを事前にしっかりと計画する必要があります。それぞれのサービスがバラバラに動いてしまうと、全体としてうまく機能しなくなってしまいます。また、開発に携わる人たちの技術を高め、組織の体制を整えることも欠かせません。小さなサービスを作るには、従来の方法とは異なる知識や経験が必要です。全員が同じ方向に向かって進むように、教育や配置換えなどを検討する必要があるでしょう。
新しい仕組みに一気に切り替えるのではなく、段階的に導入することが大切です。まずは小さな試作品を作って効果を検証し、うまくいくことを確認してから全体に広げていくと、リスクを抑えることができます。大きな変更は、関係する人々に大きな負担をかける可能性があります。段階的な導入は、変化への抵抗を和らげ、スムーズな移行を可能にします。焦らず、慎重に進めることが、最終的な成功につながります。
小さなサービス導入の注意点 | 詳細 |
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目的と効果の明確化 | 漠然とした考えではなく、目指す姿を明確にし、それに合った切り分け方をする。 |
サービス間の連携と整合性 | 小さなサービス同士のやり取り、情報の整合性を事前に計画する。 |
技術力向上と組織体制 | 小さなサービス開発に必要な知識・経験を習得するための教育や配置換えなどを検討する。 |
段階的な導入 | 小さな試作品で効果検証後、全体へ展開。リスクを抑え、変化への抵抗を和らげ、スムーズな移行を実現。 |
今後の展望
小さな部品を組み合わせるように作る仕組み、マイクロサービスは、これから先の情報技術の世界で、なくてはならないものになるでしょう。空のように広がる情報技術、いわゆるクラウド技術の進歩と共に、マイクロサービスの利用はさらに増えていくと予想されます。
小さな入れ物にプログラムを入れて動かす技術や、たくさんの入れ物をまとめて管理する道具を使うことで、マイクロサービスを組み立てるのも、動かすのも楽になります。これにより、開発にかかる時間や手間が減り、システムを様々な状況に合わせて自在に変えられるようになります。
例えば、急にたくさんの人がシステムを使うようになっても、マイクロサービスなら必要な部品だけを増やすことができます。全体を変える必要がないので、作業が簡単で、時間も短縮できます。また、一部に問題が起きても、他の部分に影響を与えずに修正できます。まるで、機械の壊れた部品だけを交換するようなイメージです。
さらに、人のように考える仕組みや、機械が自分で学ぶ仕組みといった、最先端技術とマイクロサービスを組み合わせれば、もっとすごいシステムを作ることができます。例えば、お店の商品の売れ行きを予測して、自動的に在庫を管理するシステムなども実現可能になります。
このように、マイクロサービスは、システムを作る上での大切な考え方として、これからますます発展していくと考えられます。部品を組み合わせるようにシステムを作れるので、変化の激しい世の中に対応した、柔軟で丈夫なシステムを作ることが可能になります。まるで、生き物のように変化に適応していくシステムが、マイクロサービスによって実現されるのです。
マイクロサービスのメリット | 詳細 | 従来システムとの比較 |
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開発の効率化 | 小さな入れ物(コンテナ)にプログラムを入れて動かす技術や、たくさんの入れ物をまとめて管理する道具を使うことで、開発にかかる時間や手間が減り、システムを様々な状況に合わせて自在に変えられる。 | 開発期間の短縮、柔軟な変更が可能 |
スケーラビリティの向上 | 急にたくさんの人がシステムを使うようになっても、必要な部品だけを増やすことができる。 | 全体を変更する必要がなく、作業が簡単で時間も短縮 |
耐障害性の向上 | 一部に問題が起きても、他の部分に影響を与えずに修正できる。 | 問題発生時の影響範囲を最小限に抑える |
先端技術との組み合わせ | 人のように考える仕組みや、機械が自分で学ぶ仕組みといった、最先端技術とマイクロサービスを組み合わせれば、もっとすごいシステムを作ることができる。 | AI/機械学習との連携による高度なシステム構築 |
柔軟性と堅牢性 | 変化の激しい世の中に対応した、柔軟で丈夫なシステムを作ることが可能。 | 変化への対応力が高いシステム |